股関節の痛みと腰痛が同時に出る(歩き過ぎなど)

Hip and lower back pain

 痛いのに無理していると、他のところまで痛くなります。


 症例1)

 調子が悪くなると当院に時々来てくださるちょっとお年を召したご婦人。先日股関節の痛みと腰痛でいらっしゃいました。


 伺いますと、


 「体力の維持のために毎日1万歩は歩くようにしていた。すると時々右の股関節が痛むようになったが、ちょっと痛みを感じても動くようにしていたところ、だんだん痛くなってきてしまい、階段を上るような動作がつらくなってきた。

 そしておとといちょっと前に屈んだ瞬間に今度はギックリ腰になってしまった。」


 とのことでした。


 まず整形外科に行ったが、とりあえず様子を見ましょうということで、特に何の処置もなかったそうで、うちに来られました。

大腿筋膜張筋

太ももの前側の股関節のあたり(写真の赤色)や、

内転筋

股関節の内側(写真の青色のあたり)。

 右側のこれらの箇所に張りがありました。

左腰の下の方

 さらに腰の左側の一番下のほう(赤で囲ったあたり)の筋肉が強く張っており、これが腰痛の原因になっていました。

 というわけで、まず左腰の張りをゆるめることから始め、その後右股関節の周囲をゆるめるようにしたところ、かなり歩くのが楽になったようです。


 痛みが出て来ているのに休まず動かし続けたことで、まず右股関節周囲の筋肉の緊張が抜けなくなってしまい、それをかばうように左の腰が疲労してしまったようです。



 運動で痛みを感じたら、まずは痛む動作は避けるようにして休ませましょう。しばらく休ませても痛みに変化がない時はまず医療機関などにご相談ください。

 そして痛みがなくなってから運動を徐々に再開するようにしてください。

 症例2)

 時々来て下さる方が、今回は腰の痛みと股関節の痛みでご来院なさいました。痛いのは左側が強いそう。


 体を後ろに反らしたり、右に傾けると左腰に痛みが出ました。


 股関節は動作ではっきりした痛みが出るというより、なんとなくじわーッと痛いようでした。

 観てみるとうつぶせの時に左右の骨盤の高さに差が出ていましたので、骨盤部に何かしらありそうです。

 触診してみると腰の一番下の左側に圧痛がまずありました。

 腰の一番下は腰椎5番(ハートマーク)、このあたりは体重がかかるので特に痛くなりやすいところです。

 腰椎5番のすぐ脇、脊柱起立筋(青いところ)がかなり硬くなっていました。5番は前屈後屈のときに主に動く箇所なので、ここの動きが悪いと前屈後屈がやりにくくなります。

 さらに体を右に倒すと左腰の横のほうに痛みがあり、横から押してみると圧痛が出ました。

 これは腰方形筋(赤丸)の張りですが、ここは姿勢を保つのに働くインナーマッスルです。

腰痛の時によく傷めている筋肉ですね。

そして骨盤の内側縁(赤いライン)にも圧痛がありました。

 ここは腸腰筋のなかでも腸骨筋のほうになりますが、この腸腰筋というのは腰椎から股関節の内側につながるので、ここが強く緊張すると腰と股関節に痛みを出すことがあります。

 なんでこんなところが痛くなったのか、原因になりそうなことについて伺ってみますと、飼っていらっしゃるワンちゃんの体調が悪く、病院通いを繰り返し、そしていつも抱っこしていたそうですが、抱っこの際に左の腰骨に載せていたのだそう。

 おそらくワンちゃんを左で抱っこして左腰が疲れてしまい、さらに重さが腰骨の内側の腸骨筋に乗っかったことが股関節の痛みにつながったのではと考えられました。


 というわけで、脊柱起立筋、腰方形筋、腸腰筋のあたりをよくゆるめて、腰椎5番と骨盤を調整しましたところ、痛みは半減いたしました。



(2018年6月ブログ記事、2019年11月ブログ記事に加筆修正)