肩の痛み(四十肩・五十肩)

Shoulder pain

 腕が上がらない、後ろに回せない


 四十肩(最近は五十肩なんて言うこともあります)を患う方はとても多いですね。


 肩が痛くて腕が上がらない、後ろに回せない、寝てても痛い等、

痛みの強さはまちまちではありますが、皆さん同じような訴えをなさいます。


 そして何かの拍子に傷めたというよりは、原因がよくわからないうちにだんだん痛くなってしまったというのがとても多いです。

 医学的にも、原因はこれだと決まったものはまだありません。いろいろな要因が重なったりしていると思われます。

 放って置いたら、勝手に良くなったりするので、難しいものです。



 四十肩にもいろんなパターンがありますが、僕が見る限りでは、まず殆どの場合、肩を動かす筋肉群(三角筋、棘上筋、棘下筋、大円筋など)、肩甲骨周囲の筋肉のいずれかまたは複数個所に強い緊張や圧痛があり、肩甲骨や肩関節の位置も正常側と比べてずれています。 これら緊張を和らげ、ズレの箇所を正常に戻すようにすれば、痛みが軽くなってきます。

 「腕を上げようとしても、痛くて上げられない」という場合


1 一般的に肩こりという時の「肩」の部分(首の下と言いましょうか)が痛い

2 肩の関節の部分が痛い


です。


1 一般的に肩こりという時の「肩」の部分(首の下あたり)が痛い

僧帽筋

僧帽筋(上の写真の青いラインに囲まれた所)や、

肩甲挙筋

肩甲挙筋(上の写真の赤いライン)といった筋肉に緊張が出ていると思われます。

 この場合はいわゆる肩もみ的な感じで、押すと痛い所(トリガーポイント)を探して、痛気持ちいい程度にしばらく押してやると良いでしょう。


 また、もう少し肩甲骨近くなら、棘上筋という筋肉があります。肩甲骨の上あたりにあるという感覚だと思います。ここにも押して痛い所があるかもしれません。


 症例)「腕を上げようとすると肩が痛む」と仰ってのご来院。

 症状は右に出ていましたので観てみましたら、まず普通にしている時から右肩がやや上がっていました。鎖骨の位置もやや上がっていて、肩がやや前に出ている感じでした。


 肩が上がる時に働く筋肉で大きなものは僧帽筋。肩こりの筋肉ですね。(上の一枚目の写真も参照)

僧帽筋

肩の盛り上がるところですね。まさに肩凝るところでしょう。

僧帽筋を上から観る

実は僧帽筋は前のほうにまで来ていて、今回痛むと仰っていたのは赤丸のあたり。鎖骨のすぐ上で肩関節に近い場所でした。

 腕を上に挙げるような動作をよっぽど反復でもしたのかと思い、伺ってみたら、寝る時に必ずお子様が自分の脇の下に来るらしく、しかたなく右腕を上げて寝ているのだそう。そりゃ長時間腕が上がっていたら痛くなりますね。


 この個所を念入りにゆるめたところ、幸い一度の施術で痛みは治まりました。あとはちょっと寝方を工夫していただくようにお話しました。

2 肩の関節の部分が痛い


 四十肩というとたいていこちらを指します。

三角筋

 肩関節を覆う筋肉である三角筋(上の写真)のどこかに緊張があることが多、ここの緊張による症状でわりと多いものは

「真横または斜め前に腕を上げるのはつらく、前に上げるのはいくらかできる」

というような症状。

三角筋のトリガーポイント

 赤いラインで囲ったあたりが三角筋で、押すと痛い箇所は青丸のあたり。

 ここ以外にも肩の痛みを引き起こすものはありますが、腕を上げるのがつらい場合にはまずここをチェックします。というのも肩を上げるのにダイレクトに関連するからですね。


 痛い側と触って比べれば、張りのあるところは分かりますので、ここに張りがあれば念入りにほぐしてゆるめると良いです。

三角筋のストレッチ

 ストレッチをするなら、このように親指を下に向けて何か台の上に載せます。台が低い時はしゃがんでいくとストレッチできます。


 ほぐしてゆるめる時も赤のラインの辺りを目安にして行うと良いです。


 このように腕を前に上げると痛いとき、肩関節の前側に押して痛い所(トリガーポイント)があります。

 一方腕を後に伸ばして痛い時には、肩関節の後側に押すと痛い所(トリガーポイント)があることが多いのですが、そうでない場合もまたあります。ここからはその説明です。


 「腕を後に回せない」という場合では色々なパターンがあります。よく見かけるものを大まかに分けてみました。


1 腕を下に垂らしてまっすぐ後にもっていった時、肩の関節が痛い


 この場合は三角筋という肩関節を覆う筋肉に緊張があり、肩関節の後に押すと痛い点があります。上で述べたものの反対側ですね。

三角筋後部のトリガーポイント

 三角筋の後ろの圧痛点は写真の青い丸のあたりです。

三角筋後部のストレッチ

ここはこんな風にストレッチすると良いですね。

2 腕を水平くらいに上げて、そこから後ろに引く時に肩が痛い

棘下筋

 ボールを投げる時に後へ引くような動作ですね。この場合は棘下筋(上の写真で指で押さえているところ)という肩甲骨の上の筋肉に緊張があり、肩甲骨を押すとどこかに痛い点(トリガーポイント)があります。

3 ズボンにベルトを通すような動作が痛い

大円筋・広背筋をつまむ

 この場合は大円筋・広背筋といった筋肉に緊張があります。わきの下あたりをつまんでみて、痛い点を探してみてください。

 実際には、上のようなパターンがいくつも重なっている事が多いので、あっちに動かしてもこっちに動かしても痛いということが多いでしょう。


 上のパターンを基に痛い点を探してみて、あったらそこをよく揉み解すのが有効で、痛いけど気持ち良い程度の力で90秒押すのを数回繰り返す、というのがおすすめです。



 四十肩の場合、不思議なことに放っておいても1年ぐらいで痛み自体は治まってくることが多く、それを知ってか、何もせずにそのままにしておく方もいらっしゃいます。


 ところが、自然に痛みが治まるまで何もせずにいると、痛みは治まっても動く範囲が以前に比べて狭くなってしまうことがとても多いのです。


 というのも筋肉の強い緊張は治まったとはいえ硬さは残っていますし、肩甲骨の位置や肩関節の位置はズレたままだからです。動かしてないですからね。


 痛みがあるのを無理に動かすと、痛みが出るのが癖になるのでお勧めしませんが、痛くない範囲ではよく動かすようにしておかないと、痛みが治まった後に動かせる範囲が狭くなってしまうのです。

 これは四十肩に限らず他の痛みの場合にも言えます。


 ですので、四十肩はあまり放っておかず、カイロプラクティックなどの施術によって、肩甲骨や肩関節の位置を戻して、筋肉の緊張をゆるめてやったほうが回復も早く、後々関節の可動域も狭くならずに済むんですよ。



 いずれにせよ、四十肩の時には、

・痛みの出る動きはなるべく避けつつ、痛みのない範囲で動かす

・痛いほうを下にして寝ない

・冷やさずよく温める(急性期以外)

 

 あたりを気をつけておいてください。



(2019年5月ブログ記事、6月ブログ記事に加筆修正)