マスク着用による顎の痛み

Jaw pain caused by wearing a mask

 長時間のマスク着用で顎の筋肉が疲れます


 風邪やインフルエンザが流行る時期や花粉症の時期はマスクを着用されている方がとても多くなります。

 斯く言う僕も花粉症なので、春先はマスク着用時間が多いです。


 マスクを長時間着用していて、あごが疲れることはありませんか?


 僕はすこし疲れを感じますし、以前マスクによって顎が痛くなってしまった症例もみました。


 もちろんみんながみんななるわけではありませんから、マスクの形状や顔とのフィット感などの状況によって変わるのではないかと思われます。


 マスクを着用すると、ほんの少しですがあごが後ろへ押される力がかかります。微妙に口に抵抗が加えられている感じになります。


 マスクに押される形になるので、逆に顎は前に押し返そうとする力を微妙に入れ続けることになりますが、そのような微妙な力でも長時間になると蓄積疲労になるのです。


 さらに話したり鼻がつまっていて口で呼吸しようとする時に少し口を開けますが、そこにもマスクからの押される力がかかるので、こういう時は口を開けるのに余計に力が必要になり疲れます。


 筋肉というものは、疲れすぎると過剰に緊張し、伸び縮みできなくなります。すると、血流が悪くなり、このままではまずいですよというサインとして発痛物質が出され痛みやしびれ感覚が起きるんです。


 顎を前に出すときに働く筋肉は外側翼突筋と言い、ここが疲れて過剰に緊張した状態になると、顎を前に出そうとする時、頬骨の奥や耳あたりが痛いと感じます。大雑把に言うと顔が痛むような感じがします。

外側翼突筋

・外側翼突筋・・・下顎の骨と頭蓋骨をつなぐ。

         下顎を前に突き出すときの筋肉。

         顎関節内の関節円板を前に引く。


 試しに頬のくぼみ(頬骨の奥あたり)を後に向かって押してみてください、ちょっと痛くないでしょうか。

 また、下顎を前に突き出すようにしてみた時に鋭い痛みがあったり、痛くてできないようなら、まずここが過緊張しています。

 ですので、マスクを長時間着用していてあごが疲れたなと感じるときは、

・マスク着用時間を減らす

・顎の筋肉を優しくほぐす


 が有効です。


 この箇所のほぐし方はまず、顎の力を抜くように、痛くない程度に口を開けるか、もしくは口は閉じたままで奥歯は離しておきます。できれば仰向けに寝た状態のほうがいいかもしれません。

 そして、この状態で頬骨の奥あたりのくぼみを後に向かって押してみましょう。あくまで痛気持ちよい程度の力で行ってください。1分半程度を目安に、押し始めの痛みがある程度引いたら、手を離しましょう。これを時々行ってみてください。


 顔の筋肉ですから、強く押しすぎず、長くやりすぎず、優しく気持ちよい範囲で行ってください。



 ちなみに耳が痛いという症状の場合は内側翼突筋の緊張によっても出ることがあります。耳の前の顎関節あたりに痛みが出やすいです。

内側翼突筋

えらの内側あたり。ちょっと触りにくい場所です。

内側翼突筋(下から)

下から見るとこのあたりです。痛くない方と押し比べてみればわかります。

 ここは強く押すと気持ち悪いかもしれないので優しく押してください。

 先日、当院のHPをご覧になり、お問い合わせをくださった方がいらっしゃいました。


 その方は遠方にお住まいなので、なかなか元町までは来られないようでいらっしゃいましたが、やはり顎周囲の痛みがお悩みのようで、いろいろとお話をうかがいました。


 で、お話の途中、

 「そう言えばマスクをするようになったのと同じころから痛みが出ています」

とおっしゃったので、

 「マスクを長時間着用するのも、顎の痛みの原因になることがありますよ」

と、お答えしましたところ、

 「え~、そんなこともあるんですか!」

と、ちょっと驚いていらっしゃいました。


 マスクをするとのゴムの力が口元にかかり、ほんの少しですが口を動かしにくくなりますが、そのようなわずかな力でも長時間になると顎の筋肉が疲れてきます。疲労があまりにも溜まると痛みになります。

 顎が疲れたなと感じたら、着用時間を減らしてください。


 マスク着用が長くなる冬場や花粉の多く飛ぶ春先は、顎の痛みにくれぐれもお気を付けて。 



(2012年4月ブログ記事と17年3月ブログ記事に加筆修正)