産後の腱鞘炎
腱鞘炎はスポーツをする人は勿論、しない人にもしばしば起こります。一般的にはキーボードを打つとか、スマホを触るとか、フライパンを振るとかによる使い過ぎで起こります。が、産後の腱鞘炎はちょっと特殊。
産後の場合はまず下のようなホルモンの影響があると言われています。
・出産で緩んだ骨盤を締める働きのホルモン(プロゲステロン)の影響が全身に及ぶため、腱鞘もしまり、腱とこすれやすくなる
・ホルモン(リラキシン)によって緩んだ身体の靭帯はすぐには元に戻らないが、緩んだ状態で手首を酷使してしまう
・ホルモン(エストロゲン)には腱の弾力を保持する働きがあるが、産後その分泌が減り腱と腱鞘が硬くなり、摩擦が起こりやすくなる
などなど、普通より腱鞘炎が起こりやすくなっています。ばね指なんかもそうです。
こうした状況の下で、赤ちゃんを長時間抱っこする、何度も持ち上げるなどの動作による手首の使い過ぎが重なることにより腱鞘炎になります。
手首の腱鞘炎は「ドケルバン氏病」という名で呼ばれ、親指を手に握って小指側に手首を曲げた時に、手首の親指側が痛いなら陽性とされます。
ですが僕が実際に来院される方々を見る限り、手首の親指側が痛むというのはそうなのですが、手の甲側に曲げると痛かったり、手のひら側に曲げるのが痛かったり、親指側に曲げるのが痛かったり、はたまたそのどれもが痛かったりと、痛む動作はまちまちです。
おそらく手首の使い方の個人差が出るのでしょう。
前腕には橈骨と尺骨の二本の骨があり、手首で親指の腱が通るところにあるのは橈骨。そのちょっと出っ張った所を橈骨茎状突起と呼びますが、腱鞘炎ではここに触れると痛むことがとても多いです。
白い光の部分です。
ここが橈骨の先端、茎状突起です。ここが痛むことがとても多く、ひどくなると腫れてきます。ドケルバン氏病とも言います。
上から見るとここですね。
このように親指を握って小指側に手首を曲げる動作で特に痛みます。(フィンクルスタイン・テスト)
このような症状の場合のセルフマッサージ
親指下で痛いところのそばに二本の腱があります。
ここを痛む骨には触らないようにして優しくこするように押す。
さらにもう一つ。
白く光っているあたりにある押すと痛い場所を探します。肘の下の外側あたりです。ここは腕橈骨筋、手根伸筋といった筋肉です。
ここを痛いけど気持ち良いくらいの強さで1~2分ほど押します。
良い場所に当たっていると、ここを押しながら手首を動かしたときに手首の痛みがいつもより減っているはずですので、それも場所の目安になります。
あとは肘から手首を冷やさないようにしておきましょう。
痛む側の手とそうでない手がある場合、両手首を比べると大抵触った感じが違います。
手首には小さな骨が集まっていますが、この橈骨と関節になっているところがズレていたり、詰まった感じになっていたり、痛む側の手首には骨のわずかなズレがあるのです。
なので、施術では、
・手首を痛くない方向に向ける
・手首の小さな骨のいずれかがずれていれば戻す
・詰まった感じなら橈骨と手首の骨(舟状骨)を離すように、橈骨を肘側へ少し圧をかける
などを行います。
そうすると改善しやすいです。
当院のYouTube動画もご覧ください。
同様に手首の小指側に痛みが出ている場合も同様です。
痛いけど気持ち良い程度に優しく押します
前腕の内側が手首を曲げる筋肉なので、赤いあたりに押すと痛いところがあれば、優しく押してみてください。
さらに抱っこが多いことによる使い過ぎで発生する手首の痛みとしては、手首の甲側に出ることも多いです。
ずっとお子さんを抱えていてだんだんここが痛くなってきたというのは、生後2,3か月くらいからが多いでしょうか。お子さんの月齢が進んで体重が増えるとよりつらくなってきますね。
抱っこの際、手首を掌側に長時間曲げていると、反対の甲側の筋肉(手根伸筋)は引き伸ばされた状態で力を込め続けることになり、過剰に緊張し疲労することで痛みが発生します。
このような場合、たいてい赤い線のあたりに張りがあります。橈側手根伸筋という筋肉です。
押すとコリコリしてて痛いような気持ち良いような場所に指を当ててやんわりと押すのが良いです。
手首を手のひら側に曲げると痛い場合はそっちには曲げずに行いましょう。
産後はやはり赤ちゃんの世話が続きますので、施術してもしばらくするとまた痛くなって来る事もあります。だからと言って放っておくとドンドンひどくなることもあるので、時々こういう施術でひどくならないようにしておく方が良いでしょう。
通常、お子さんが少し歩くようになったり抱っこが減って来たり、さらにお母さんの体調が戻る産後1年位までに大抵手首の腱鞘炎は治まりますから、あまり深刻にならないでください。
ご自分で気を付ける点は、
●手首周囲をよくあたためる。冷やさない。真夏以外は長袖を着る。リストウォーマーなどを使用するのも良い。
●なるべく痛む動作を避ける。出来ることなら手首を休ませる。
あとは上記の方法を試してみてください。