膝の痛み(様々なパターン)

Knee pain

 太ももの前後、膝裏、ふくらはぎなどの筋肉の緊張。産後にも多い。


 お年を召した方に膝の痛みでお悩みの方が多いですが、若い方にも時々ある症状で、腰痛ほど頻度は多くありませんが産後のお母さん方にもよく起こるものです。


 中でもしゃがんだり立ったりで膝が痛いというのは多い症状。で、これがもっと進んでくると曲げるだけで痛み、さらに進むと何もしてなくても痛い、となってきます。


 膝が痛いというと、軟骨が磨り減っているからだとか言われるのをよく耳にします。


 ですが軟骨そのものには知覚神経はありません。骨の関節面の軟骨部分は骨同士が当たる事も想定されているのでしょうか、痛みを感じないように出来ています。だから、軟骨が磨り減っただけでは本来痛みは出ないはずなんです。


 実はレントゲンで軟骨が減っているように見えても痛みの無い方はたくさんいらっしゃいます。40、50を超えてくると、痛みが無い人にも軟骨の減りがかなりの割合であります。


 しかもさらに軟骨が無くなって、関節内で骨質同士が当たったとしても、なんと骨質にも知覚神経はあまり無く、大部分は血管運動神経なので、理論上あまり痛みを感じないはずなのです。だから骨質を外科的に切ってもあまり痛みを感じないようです。

 骨折などの際の痛みは、骨をおおう骨膜からのもので、骨膜には知覚神経があります。


 では膝の痛みはどこから出ているのかというと、考えられるのは膝の周りの筋肉、靭帯、腱、滑膜といった組織で、特に筋肉が主になります。

 「太ももの前側の場合」


 よく見かけるのは太ももの筋肉である大腿四頭筋のハリ(過緊張)からくるものです。


 大腿四頭筋群は内側が内側広筋、真ん中が大腿直筋、その下に中間広筋、外側が外側広筋という4つの筋肉からなっています。

 

 内側広筋に過緊張があれば膝の内側に、大腿直筋に過緊張があれば膝の前に、外側広筋に過緊張があれば膝の外側に痛みが出ることが多いですが、膝全体が痛むように感じられる場合は真ん中の大腿直筋と内側の内側広筋の2つが特に原因になります。これらが過剰に緊張すると、膝の屈伸動作や階段の上り下り、坂道を下るようなときに膝の痛みを感じます。


 産後の場合、赤ちゃんの世話を始めると、赤ちゃんを床から抱え上げる、床に下ろすといった、スクワットのような動作が非常に多くなります。これこそが膝の痛みの原因。


 この動作を繰り返すことにより、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)が疲労し過剰に緊張して伸び縮みできなくなることで虚血状態になり痛みが発生します。

膝の痛みの箇所(前)

 膝の痛みの箇所である程度原因箇所の予測ができます。


・膝全体が痛む → 大腿直筋、内側広筋

・膝のお皿の上が痛む(上の写真の赤いライン) → 大腿直筋

・お皿の下が痛む(上の写真の紫のライン) → 内側広筋

・膝の内側が痛む → 内側広筋

・外側が痛む → 外側広筋

 などの訴えがあり、これらはどこが痛みの原因になっているかの目安になります。

 ※膝の裏側の痛みは後半に説明いたします。

 これらを見て分かりますように、僕が見ている限りでは

・膝全体が痛む

・お皿の下が痛む

 ような症状にも内側広筋が関連しているので、大腿四頭筋の中でも内側広筋(上の写真の水色の丸)を僕は重視しています。

 ※ちなみになんでお皿の下に痛みが出るのかと言うと、大腿四頭筋の腱はお皿の下の脛骨の上のほうにつながっているからではないかと考えています。


 施術の際には、腰椎、骨盤、膝関節も調整しますが、ご自分では上記のあたりをほぐすのが有効です。膝が痛いからと言って、やみくもに膝を揉んだりしてもダメなんです。原因となっている筋肉の緊張箇所を把握することが重要です。


 さて、筋肉の場所です。

 太ももの前側の真ん中が大腿直筋。左脚ですよ。

大腿直筋

このあたりの筋肉です。(きれいな脚でなくて申し訳ありません。)


 ここが強く緊張すると、屈伸運動や階段の上り下りで膝に痛みが出ます。押されるとコリコリしているのでよくわかります。

 ゆるめる際、大腿直筋は押すと結構痛いことが多いので、手のひらで痛いけど気持ち良い程度にくらいが良いでしょう。


 そして大腿直筋よりやや内側にあるのが内側広筋。ここが意外と膝全体に痛みを出しているわけです。

内側広筋

 内側広筋が膝のほうにくっつく、ピンクの星のあたりに硬くコリコリした個所がありますので、そこをよくゆるめます。親指でつかむようにして上の★印のあたりを押しても良いです。

内側広筋の圧痛点

このように膝を曲げた状態で内側広筋(水色のあたり)をほぐしてゆるめると効果的です

内側広筋のストレッチ

 セルフケアとして縮んだ筋肉をストレッチして伸び縮みできるように回復させるのが有効。

立って片方の足首をつかんで太ももの前を伸ばす。

床に座って太ももの前側を片足ずつ伸ばすのもOK。こまめに行うのが良いです

 「膝の裏側の場合」


 膝の裏側が痛い場合、太ももの裏の大腿二頭筋、膝の真裏の膝窩筋、ふくらはぎの腓腹筋、これらのいずれか(または複数同時)の過緊張によることが多いです。


 以前「膝や足首を曲げると膝の内側に痛みが走る」という症状の方がいらっしゃいました。


 膝の痛みの場合、屈伸すると痛い、階段の昇り降りが辛い、でも単純に曲げ伸ばしは痛くないということが多く、その場合は上記のような太ももの前側の筋肉の緊張によるものなのですが、そのときは単純な曲げ伸ばしも痛み、足首を曲げ伸ばししても痛むという珍しい症状。


 膝の内側の痛みが屈伸や階段の昇り降りのような場合だけであれば、太もも前内側の内側広筋という筋肉の過剰な緊張を疑うのですが、ただ曲げるだけでも痛むということは原因はそれだけではないです。(上の写真のピンクの★が内側広筋によくある圧痛点。)


 膝を曲げるという動作で使い、なおかつ膝の内側につながる筋肉というと、太もも裏の半腱様筋・半膜様筋、太もも裏の腓腹筋の内側が筋肉が悪さしていると疑われます。足首の動きが痛みにつながってるとすれば、膝から足首につながる腓腹筋はとても怪しい。

半腱様筋・半膜様筋、腓腹筋の内側

 黄色い★が半腱様筋・半膜様筋の圧痛点。ピンクの★が腓腹筋の内側の圧痛点。


 触ってみたところ左脚全体に張りがありましたので、まず左側に体重がかかりがちになっていることが分かりました。さらにやはり腓腹筋の内側に圧痛点がありました。

こういう時は骨盤のバランスを調整する必要があります。


 脚全体を入念にほぐし、さらに骨盤、膝関節(大腿骨と脛骨)の調整を行ったところ一度の施術で痛みが6割がた消えました。


 4日後に2回目の施術を行いましたが、ご来院いただいた時点で、ほぼ痛みはなく、なんとなく痛みがあったなという余韻が残っている程度でした。

ハムストリングスのストレッチ

 筋肉の過剰な緊張による痛みの場合はストレッチが有効です。


 半腱様筋・半膜様筋はハムストリングスですが、上のようにやや高いところに足を載せて膝を伸ばし体を前に倒すとハムストリングスのストレッチになります。

 腓腹筋はアキレス腱を伸ばすようにするとストレッチになります。



(2017年5月ブログ記事、11月ブログ記事に、2019年5月ブログ記事に加筆修正)