産後の骨盤のぐらつき・不安定感、座るとお尻の骨が当たる

Postpartum pelvic instability

 「仙骨や尾骨が当たるのは妊娠中や産後に多い」


 産後数か月経っても骨盤あたりがぐらつく、不安定だという症状の方を時々見受けます。


 妊娠中から骨盤を支える靭帯を弛めるためのホルモンが出て、骨盤は出産時に一番拡がります。


 産後は拡がった骨盤を戻すようなホルモンが出ますが、そんなにすぐには戻らないので、通常は以前の感じに戻るのに2か月くらいかかります。


 でも、人によってはもっとかかって、半年くらい経っても骨盤が不安定な方もいらっしゃいますね。


 ・立っている時にしっくりこない

 ・恥骨、仙骨(お尻側)、股関節に違和感がある

 ・腰もそうだが、その下のお尻のほうに痛みがある

 ・座った時にお尻の骨(尾骨)が当たって痛い

 ・仰向けに寝るとお尻の骨(仙骨)が当たる


 そして中でも産後の尾骨の症状に限って言うと、

 ・床や椅子に座ると当たって痛い

 ・お風呂に浸かって座ると当たって痛い

 ・ソファーに座って丸くなると痛い、もしくは立ち上がる時に痛い


 というような症状を訴えられることが多いです。妊娠中から出てくることもあります。


尾骨と仙骨

 骨盤の模型で説明しましょう。写真は骨盤をお尻側から見たものです。

 尾骨というのはピンクの星のところで、尻尾の名残といわれる骨です。人によって長さが違います。

ちなみに緑のクローバーが坐骨。通常座ると座面に当たる左右のお尻の骨はここです。


 当たる部分は、骨盤の真ん中の仙骨とその下の尾骨という場所で、ここが浮き上がって、丸く盛り上がった感じになっています。

仙骨が浮き上がる

 出産時には骨盤がグッと拡がります。真ん中の仙骨も浮き上がったようになり、尾骨も一緒に浮き上がるので、仰向けに寝ると、床に当たって痛かったり、本来なら座った時にそんなに当たらない尾骨が当たりやすくなります。通常は徐々に骨盤が戻ってくにつれ、じきに痛くなくなってきます。


 産後数か月間はこのような出産の余韻が残ることがあり、いまひとつ骨盤の戻りが悪いと、ここが盛り上がったままになって、骨が当たる状態が長く続くことがあります。

尾骨筋

尾骨って、必要なのかそうでないのかよくわからないと思われるかもしれませんが、尾骨筋という坐骨とつながる筋肉があり、骨盤の下面を支える骨盤底筋群の1つとなっています。小さいですけどね。


 動作によって尾骨が痛む場合はたいていこの筋肉が張って硬くなっていますので、ほぐしてゆるめると痛みが治まってきます。実際には指一本分ぐらいの幅しかありませんが、その中でよく効く角度を探します。

仙骨をゆるめるライン

 同様に仙骨が痛むときも仙骨の際(赤い線)のあたりを探し、仙骨から坐骨につながる靭帯や筋肉の硬いところをゆるめるのが良いです。


 この個所はとてもデリケートな場所なので、細心の注意を払ってゆるめます。

 根本的には骨盤全体の拡がりを戻すようにしてやると、浮き上がった仙骨も戻っていきますが、骨盤の拡がった感じは、骨盤を安定させている筋肉が弱ってしまっていることが大きな原因。


 妊娠中・出産・産後しばらくの間は運動量が減るため、筋力が落ちてしまい、骨盤を支えにくくなるからなんですね。なので施術とちょっとした筋トレを同時に行い、骨盤を安定させる必要があります。


 骨盤を調整し、脚の筋肉をほぐしたり股関節を回したりして、下半身の筋肉がゆるむだけでも以前の感じに戻っていきやすくはなりますが、やはり弱った筋力を戻すことが骨盤回復の近道。


 ですので当院では、施術だけでなく、その人に合わせて弱っている筋肉のエクササイズ方法なども指導しています。


 ちなみの骨盤を支えている筋肉の中でも重要なのは、腸腰筋のようなお腹の奥の筋肉です。深層筋です。


 腸腰筋が弱っていると、妊娠中からのお腹が前に出た姿勢が戻りにくく、腰が反った状態になり、仙骨が後ろに浮き出て、出尻のような恰好になるんです。

 で、さらに腰痛も起こりやすくなります。


 さらにお尻そのものの筋肉や太ももの内側の筋肉なんかも骨盤を支える意味で重要ポイント。これらは骨盤を支えるという意味だけでなく、スタイル維持という意味でも重要ですね。

(症例)

 産後の方の症状でよく伺うのが「ふらつく。不安定感がある」です。


 例えば先日いらっしゃった方の場合、産後5か月経ち、体調が悪く体重も産前より減ってしまい、長く歩くとフラフラするという症状をお持ちで、これにプラスしてこの方の場合、右足親指のしびれもありました。


 産後の不安定感の場合、やはり骨盤の不安定感を考えます。

 出産で骨盤の靭帯が緩くなるので、そこが戻るまでは骨盤にグラグラ感が出ることが多いです。

 骨盤は体を支えている重要箇所ですが、出産で体力が落ちてしまっているのも重なり、体全体の不安定感につながっていると考えました。

前脛骨筋

 まず初回の施術では骨盤を含めて体全体を調整することを中心に行いました。右足親指のしびれはおそらく前脛骨筋の張りから出ていると考え、そこをゆるめるようにしました。


 2回目の施術は8日後。お越しいただいた時には体の不安定感が減り、右足親指のしびれは一週間治まっていました。

 この時起床時に足の甲が痛む、脚がむくむという症状を訴えていらっしゃったので、その施術を行いました。第3腓骨筋の張りをとることがメインでした。

第3腓骨筋

 第3腓骨筋は足首の外側上あたりです。


 前脛骨筋も第3腓骨筋も脚の外側の筋肉なので、体重が外にかかっていることの表れです。体重が外にかかっている時は疲れや冷えがありますね。


 3回目の施術はその8日後。体のフラフラ感はなくなり、足の甲の痛みは少し減ったもののまだ残っていました。

 ズボンのサイズが1サイズ減ったそうです。骨盤が締まって安定してきたんですね。


 4回目の施術は一週間後。足の甲の痛みはなくなり、背中が凝るとのこと。これは抱っこや授乳によるものですね。赤ちゃんのいらっしゃる方にはとても多い症状です。

 5回目はお正月を挟んだので3週間後。肩と背中の凝りのみで体調は良いとのこと。


 このように体の不安定感というのも産後には時々ある症状ですが、カイロプラクティック施術によって徐々に回復していきますよ。



 (2016年7月ブログ記事、2017年11月ブログ記事に、2020年1月ブログ記事に加筆修正)