強い衝撃による顎の痛み

Jaw pain due to strong impact

 ぶつけたところの痛みと力がかかったところの痛みとがあります


 時々ある症例が、


・顎を強くぶつけた

・殴られた、蹴られた


 など、強い衝撃が原因による顎の痛みです。


 こういう時には、「ぶつけた箇所の痛み」と「ある箇所に力がかかったために出た痛み」とが生じます。


・ぶつけた箇所自体の痛み

 ぶつけた箇所の腫れなどはそこの組織が回復する待つ必要があります。

 腫れ、強い痛み、赤くなっている、熱を持っている場合は炎症ですので、初めは少し冷やすとよいです。


・強い衝撃で力がかかった箇所の痛み

 顎に強い衝撃がくると、顎周囲の筋肉などの組織と顎関節そのものに強い力がかかります。

 顎の周囲の筋肉が強く緊張すると痛みになりますし、顎関節そのものにも圧力がかかり中の組織を傷めます。

 ちなみに例えばボクシングなんかで顎の骨が折れる場合、下あごの骨の顎関節の部分は細いので、そこがよく折れます。


 顎の筋肉(咬筋、側頭筋、外側翼突筋など)が強く緊張すると当然顎周囲に痛みを出し、それ以外にも首の筋肉なども強く緊張していることが多いです。

側頭筋を押さえています。

ピンクの星のあたりが咬筋。水色のハートあたりが外側翼突筋です。

胸鎖乳突筋(赤いラインの間)は顎の近くや目の周り、頭など、顔の広範囲に痛みや違和感を出します。ここはムチ打ちになった時にもよく傷めます

斜角筋の緊張は腕のしびれにつながることもあります。

 さらに強い衝撃がかかることで、下あごの骨や首の骨がずれることが多いです。

 特に下あごは横方向か後ろ側にわずかにずれます。

 ずれると顎関節内で下あごの骨と関節円板の位置が合わなくなったりして、ゴリゴリ音が鳴るようになったりすることもあります。関節円板そのものがずれてしまうとなかなか元に戻せないのでこれは厄介です。


 これらいろいろな痛みの要因のため、施術は


・筋肉の緊張箇所を弛める

 これを行っておかないといつまでも痛みが残ることがあります。

・下あごの骨や首の骨のズレを戻す

 ずれたままにしておくと違和感や関節音が残ったりします。


 というように行います。


 ちょっと変わった例ですと、転倒して顎を強く打ち付けたあと、傷は治ったものの、口を開けて首を動かすと打ち付けた箇所のあたりに違和感が出るというものがありました。

 首を動かした時に違和感が顎でなく打ったところに出たんです。


 1回目の施術は筋肉の張りをとるようにしましたが、その時はさほど違和感が変わりませんでした。

 2回目はその5日ほど後。打ったことによる顎のわずかなズレを戻すようにしたところ大幅に違和感が軽減。

 3回目はさらにその10日ほど後にしましたが、ご来院の時点で違和感がほぼなくなっており、首の張りのほうが気になるとのこと。

 これはぶつけた時の強い衝撃が首にかかって、筋肉が緊張してしまっているのです。むちうちなんかによくある症状ですが、軽度でした。

 顎の違和感がなくなって、他が気になってきたということですね。というわけでここも弛めるように施術。


 いずれにしても、このような強い衝撃による痛みは放置しないようにしましょう。


(2016年4月ブログ記事、2017年5月ブログ記事に加筆修正)