エクササイズや筋力トレーニングでの痛み

Pain in exacise and strength training

 「手のしびれ」と「腰痛」の症例


 症例)手の痺れ


 症状)左手の薬指・小指が2週間前から痺れる。徐々に前腕の方に痺れが広がってきた。

前腕の屈筋群

 聞いてみると、3週間前からビリーズ・ブートキャンプ(ビデオでのエクササイズ)を行っていたそうで、腕を触ってみると、前腕の屈筋と指の屈筋(物を握る時に使う)が張っていて、前腕に圧痛点がありました。


 大まかに見て、赤のラインが橈骨、青のラインが尺骨。その上に手首を動かす前腕の屈筋と物を握る時に使う指の屈筋が付いています。

 ビリーバンドは使っていなかったそうですが、エクササイズ時に無意識に拳を握っていたのでしょう。


 念入りに前腕の筋肉の緊張をとるようにしたところ、初回の施術でかなり痺れが消え、二回目でほぼ無くなり、3回目で全く無くなりました。



 拳を握り締めるような事が多いと、手根管症候群と呼ばれる症状(手の痺れ)が出るといわれますが、神経圧迫によるよりは、手の筋肉、前腕の筋肉の使いすぎによる筋筋膜性疼痛からのもののほうが多いでしょう。痛いとかジンジンしびれるとかはそうです。


 はっきり神経圧迫がある場合はジンジンしびれるというより感覚が鈍くなって、触られた感じが鈍くなりますから、触られて感じないとか感覚が弱い場合は整形外科でちゃんと検査してもらった方が良いでしょう。

 例)腰痛


 症例1)左の腰痛と臀部に鈍痛。太もも前側にまで広がってきている。

    1ヶ月前から出始め、この2週間ぐらいひどくなってきた。

    脚を上げづらくなってきた。


 この方は一日15分でよい運動を30分みっちりこなしていました。

大腰筋

 症状からして大腰筋が怪しいと調べてみたところ、やはり左のお腹の奥、骨盤の内側あたりに圧痛点(トリガーポイント)がありました。


 大腰筋というのは、腰の骨から骨盤を抜けて大腿の一番上につながっている筋肉で、膝を持ち上げる時に使います。骨盤の位置を安定させている筋肉でもあります。この大腰筋と隣の腸骨筋を合わせて腸腰筋と呼び、体の深層の筋肉として重要視されています。


 ここが衰えると脚が上がりにくくなるので、つまずきやすくなったり、ぽっこりお腹になったり、出尻になったりします。


 エクササイズとしてここを鍛えるのはよい事なのですが、この方の場合は今まで何もしていなかったのに突然、しかも長時間始めてしまったのが災いしたのでしょう。


 この場合も念入りに大腰筋の緊張をとり、腰椎と骨盤のバランスを整えたところ、初回の施術で痛みがかなり消えました。


 エクササイズを始める時には、無理の無い範囲で徐々に行いましょう。

 症例2)デスクワークで腰が疲れたところに筋トレをして腰痛がひどくなってしまった。

     前にかがむ、立って膝を上に挙げる、靴下を履く、

     というような動作で腰の下のほう(仙骨付近)に痛みが出る。



 当初、腸腰筋の緊張かなと思って、仰向けになってもらって腸腰筋を押して調べてみたのですが、どうもはっきりと反応が出ない。


 とりあえず仙腸関節や腰椎の調整をして、腰椎5番付近の筋肉の緊張をとり、もう一度動作のチェック。しかし痛みは取れない。


 実はこの方、かなりマッチョで、腹筋部も分厚い方。だから初めのチェック時にお腹を押したときに、表層の筋肉が邪魔して、その奥の腸腰筋にキッチリ届いていなかったかも。


 そこでまず他の場所をゆるめてから再度のチェック時。この時にはかなり強めに押しました。普通の人だったら相当痛いだろうと思うくらいでした。

 すると、今度は圧痛が出ました。

 他の箇所をゆるめた後のほうが原因箇所の緊張がはっきりしやすくなることがあるんです。

 

 そして改めて腸腰筋を弛める施術を行い、動作チェックを行うとだいぶ楽になったそう。


 患者さんの体型、体格もよくよく考慮しないといけないなと改めて思いました。


 痛みがある時は大抵筋肉の緊張があります。

 そこを無理して筋トレなどを行うと、さらに緊張させてしまいことになり逆効果になります。

 痛い時には筋トレは行わないほうが良いですよ。



(2016年7月ブログ記事より加筆修正)