お尻のしびれや痛み

Numbness and pain in the buttocks

 運動や転倒などが原因となったいくつかの症例。


 お尻が痛いという患者さんが時々いらっしゃいます。

 痛む場所は、お尻でも仙腸関節と言われる場所付近が多いです。

仙腸関節

 骨盤は、背骨の真下が仙骨、それが二つの腸骨に挟まれる形で、三つの骨からなります。

 そして仙骨と腸骨のつなぎ目が仙腸関節です(写真の赤いライン)。左右二箇所あります。

 そしてここに大殿筋、中殿筋、小殿筋、梨状筋など様々な筋肉が付いており、体を支えています。


 いくつかの症例を挙げてみます。

症例1

 2週間前、久しぶりにジョギングをしてから徐々に痛くなって、この一週間は休めているが痛みが引かないという、30歳男性。

 左右両方のお尻の仙腸関節に痛みがあり、体を後ろに倒すと痛みが強く出ていました。

 見た目にもわかるくらいお尻の筋肉が緊張していました。



 この場合のように急に運動を始めた時には何かと痛いところが現れたりするものです。

 腰の反りも強い方でしたので、おそらく普段から腰とお尻をキュッと締めるように力を入れる癖があったのだと推察されました。

 走るときには普段よりも力がかかりますので、その疲労が蓄積したのです。

 この方のように後ろに倒すのが辛い時には、逆に体を丸めるようにして施術すると楽になる事が多いです。

②2、3週間前に転倒し右膝を打撲して、右膝の痛みが治まってきた頃から、徐々に右のお尻の仙腸関節部が痛くなり始め、その後左側まで痛くなってきたという30歳男性。


 整形外科でいろいろ検査してもらったが骨には異常がないと言われたとのことでした。やはりお尻の筋肉を触ってみると圧痛があり、筋肉が緊張しているのがわかりました。

 この方の場合は前屈する姿勢で痛みが出ました。右膝を打撲したため、その負担をお尻の筋肉がかばって仙腸関節部が痛くなり、さらにそれをかばうかたちで、左側まで疲労が蓄積して痛くなってきたのだと思われます。


 この方のように前屈が辛い時には体をまっすぐにした状態か、反らせた状態で施術すると効果的ですが、太ももの前側やすねの筋肉にも張りがあることも多く、そこをよくほぐすと楽になる事が多いです。

中殿筋・大殿筋

③ぎっくりお尻ともいうべき症状の方がいらっしゃいました。


 しゃがんでの作業を長く続けた翌日、急に左のお尻の辺りが痛くなり、歩いても痛むし、仰向けに寝ても床にお尻が当たると痛むし、寝返りをしようとしても痛む、という症状で、ご家族といっしょにここまでなんとか歩いてこられはしたものの、という感じでした。


 見ると左のお尻の筋肉が硬くなっており、うつぶせに寝てもらうと右側よりも盛り上がっていました。触っても右側はなんともないのに、左は痛むのです。

 写真の水色のあたりの中殿筋やさらにその下あたりの大殿筋(写真の赤いあたり)、これらがかなり強く張っていました。

 初回の施術ではここをゆるめることに集中して行いましたところ、歩く際の痛みはかなり治まりました。


 二回目の施術は二日後に行いましたが、御来院時には普通に歩いて来られました。が、寝る時に仰向けだとまだ痛み、動き出しが辛いとのこと。右側も少しではあるが気になるとも仰っていました。


 まず初回同様左のお尻の筋肉をゆるめるように行いました。そして今回は右側も少し行いました。


 当初の痛みが治まってくると、他の場所の違和感が感じられてくることもあります。元々の痛みが良くなってきている兆候です。


 さらに仙腸関節(上の一枚目の写真の赤いライン)の可動性をよくするようにいたしました。


 その日はお帰りいただき、三回目の施術はまた2日後。3度目の御来院時にはかなり普通に歩いて来られました。


 「朝の起床時はまだ動くと痛むが、動いているうちに徐々に痛みはましになってくる、

が、ふとした動き出しにまだ少し痛む、痛みは当初の左だけでなく右にも少し感じる。」ということでした。


 痛む箇所は当初のようにお尻全体ではなく、仙腸関節の付近のみになっておりましたので、だいぶ改善してきていました。


 この時は左右の腰とお尻の筋肉をゆるめ、仙腸関節の調整を行いました。


 そして数日後にもう大丈夫ですと電話でのご連絡をいただきました。

④これも急な痛み。

 当初は骨盤のやや上のほう一帯が痛い感じで、立っているだけでも痛みがあり、やや体を前に倒したほうが楽だとのことでした。

お尻の上のほうの筋肉

 場所は赤のあたり一帯。腰のすぐ下くらいのところです。調べてみるとお尻の筋肉のあちこちに強い張りがありました。

殿筋群

 色の付いたあたりが張りのある個所。

 青が中殿筋、黄緑は大殿筋や梨状筋、赤は大腿方形筋など。あちこちに張りがありました。


 うつぶせに寝て施術をしようとしましたが、その体勢でも痛むとのこと。

 楽なのは横に寝るということだったので、初回は基本横向きのまま施術。メインはこれらの筋肉をゆるめることに集中しました。


 施術後は割と楽になったということでしたので、やりすぎないようにして終えました。

梨状筋など

 2日後のご来院の時には、痛みの箇所が先日よりも下がってきていましたが、まだ立っていても痛むとのことでした。

 水色のあたり(仙骨の真ん中から下)に痛みがあり、触ると赤のあたりに強い張りが残っており、特に赤の上のほうの奥にある梨状筋に張りがありました。


 骨盤の上にはいくつかのお尻の筋肉があり、多くは仙骨という真ん中の骨にくっついているので、これらの筋肉が張ると仙骨の辺りが痛い感じがすることが多いんです。


 今回も基本横向きに寝た状態で施術し、施術後は立っているときの痛みはとりあえず治まりました。

 筋肉のあるところはどこにでも急な痛みに見舞われる可能性があります。


・同じ体勢を長く続ける

・同じ動作を繰り返す


 というのは特定の筋肉を過剰に緊張させ、疲労させてしまうので、注意が必要ですね。


 いずれの症例も、基本的にはお尻の筋肉が非常に緊張してしまったことによる痛みで、腰椎と骨盤のゆがみを矯正して、お尻の筋肉をよくほぐす必要がありました。


 セルフケアとしては、


・温める(蒸しタオルなど)

・ストレッチする

 が有効です。

お尻のストレッチ1


お尻のストレッチ2

伸ばして気持ち良い程度にこれらのようなストレッチを行うと良いです。

※妊娠中や産後の骨盤・お尻の痛みについてはこちらをご覧ください。



(2012年9月のブログ記事、2017年6月のブログ記事、2018年6月のブログ記事、2018年9月のブログ記事に加筆修正。)