下腹部痛はお腹の奥の筋肉の緊張も関係します
時々下腹部の痛みでのご来院があります。
こういう場所の痛みの場合は、まず患者さんのほうで病気かと疑って先に医師の診察を受けていることが多く、そこで異常が見つけられず病気ではないとすれば他に原因があるのかなと思ってお越しになるというパターンが多いです。
病気やケガでなければ、僕はお腹の奥の筋肉の緊張を疑います。
病変があるようなら特定の動作で痛むというよりはいつも痛みがあるものですので、例えば特定の動作で痛む場合、または痛みが出たり出なかったりする場合、このような場合には筋肉の緊張による痛みではと考えられるわけなのです。
お腹の奥の筋肉に腸腰筋という筋肉があり、過剰な緊張があると、下腹部から脚の付け根の表側が痛くなり、さらに太ももの前側にも違和感が出てくることがあります。
腸腰筋は腸骨筋と大腰筋からなります。場所は骨盤の縁の内側なら腸骨筋。へその横あたりなら大腰筋。
まずお腹を触ってみて、硬いかどうか、痛みがあるかどうかを調べます。硬いとか痛いとかいう時はその場所を弛める必要があります。
ご来院の方はご自分のお腹が硬いという自覚がないことが多いです。たいてい他人のお腹なんて触ることもないし、自分のでさえそんなに触りませんからね。
そしてこういう場合、お腹の調子自体が良くないことが多く、お腹を毀していたり、食べ過ぎていたり、便秘と下痢を繰り返していたりします。お腹の調子が悪いとお腹の筋肉も緊張するんです。
長時間のデスクワークをしていると、症状も改善しにくくなりがちですね。
ちなみにこの腸腰筋の緊張は腰痛を引き起こしていることもあります。
こういう場合の施術の流れとしては、
①まずはお腹の筋肉の緊張を弛める。
②脚の付け根や太ももへの違和感がある場合、腸腰筋の緊張からだけでなく、太ももの筋肉そのもの自体に緊張があって違和感が出ていることもあるのでそこも弛めます。
③そしてお腹や太ももの筋肉に緊張があると骨盤部の可動性に影響が出てくるので、骨盤部や腰椎の調整も行います。
④お腹の筋肉や太ももの前側の筋肉のストレッチも有効なので、その指導もいたしますが、お腹の調子が悪いなら食事内容も考えないといけません。
手っ取り早くは食事を抜くか軽くするのがこういう時は効きますね。
(症例1)
久しぶりにお越しになった方がいらっしゃったのですが、腰骨の前あたりから股関節の前側にかけてが歩いたりしたときに痛むということでした。
股関節の前あたりというと、一般的にいう腰骨の前の出っ張りのあたりに大腿筋膜張筋や縫工筋という筋肉がくっつき、その奥には大腿直筋がくっついていますが、それらの筋肉に張りがありましたので、まずそれらをよくほぐしてゆるめました。
それでいくらか痛みは軽減されたものの、まだ残っていました。
そこで次に腰骨(腸骨)の内側あたりをよく調べてみると押すと痛い箇所が見つかりました。
ここは腸骨筋と言い、腸骨の内側から大腿骨の内側につながる筋肉。
場所はピンクの星印のあたり。
ここをよくゆるめたところ痛みはかなり軽減したようです。
指を差し込んでちょっと腸骨側に押すと分かりやすいです。
仰向けに寝て、膝を立ててやるとより分かりやすいでしょう。(下に写真があります)
ソファーなんかで丸くなって長時間座るとか、低い椅子に猫背で長く座るとかはここの筋肉には良くありませんね。
(症例2)
先日、下腹部の痛みでのご来院がありました。
お医者さんでもいろいろ検査してもらったが異常が見つからなかったので、内臓の問題でないならということでのご来院でした。
ずっと下腹部にズーンと違和感があるものの、それにも波があり、骨盤の周囲にもぎすぎすした様な感じがあると仰っていました。
動作によってその感覚が変わるかというとそうでもないので、触診してみましたところ、確かに下腹部に硬さがあり、骨盤の骨のヘりの辺りを押すと痛みがありました。
腹横筋や腸腰筋(腸骨筋、大腰筋)です。
とくに腸骨筋の硬さが強かったので、かなり念入りにほぐしました。と言っても下腹部はデリケートな場所なので優しく行う必要があります。あとは骨盤周囲のお尻の筋肉をよくほぐしました。
腸骨筋を丹念にほぐしてゆるめていくうちに徐々に痛みが軽くなってきたそうです。(同じようなケースだとお腹が軽くなってスーッとしたとおっしゃる方もいました。)
で、お話を伺うと春からかなりストレスフルな職場に転職なさったそうで、御本人もそれが原因ではないかと疑っていらっしゃいました。
たしかに、ストレスによって体のどこかしらが強く緊張することがあります。特にお腹は緊張が出やすい場所。ストレスでお腹に力が入ってゆるまないと、緊張による結構不良で痛みが出ることは十分考えられます。
内臓に問題があるわけではない場合は、お腹の奥の筋肉が張りを疑ってみるのも一つです。
腸腰筋を自分でゆるめるにはこのように押すのが効果的です。あまり強く押しすぎないくらいがよいです。
ストレッチ方法はこのように。
張りのあるお腹を前に突き出す感じで。
あとは冷たいものを摂りすぎないように。冷たい物も摂りすぎるとお腹の奥の筋肉が緊張しますからね。
当院のストレッチ動画です。ご参考になれば幸いです。