添い寝、授乳など赤ちゃんの世話をしているうちに症状が出ます
産後は股関節のトラブルで来られる方が多いです。
いろんなトラブルがありますが、大まかに分けると、
・股関節を開こうとすると痛みが走って開くことができないとか、痛みはなくても気がついたら股関節が全然開かなくなっていた、と言う場合。
・股関節の外側のほうが痛む場合
があります。
「股関節が開かない場合」
単純に妊娠中から産後にかけてあまり動かなかったため体が硬くなってしまった故にというのが多いのですが、この場合は硬いだけで特に痛みを伴うものではありません。
開かないのを無理に開かせようとすれば痛いですが、硬さからくる痛みだということは御本人にもわかります。
これとは別に赤ちゃんの世話をしているうちに股関節が痛くて開けなくなってしまうということがまれに起こります。
この場合はたいてい片側の股関節に起こります。開こうとすると痛みが走ってこのように反対側に比べて開くことができません(下の写真では左が痛いほうです)。
産後あぐらをかいて授乳する際に片方の膝に赤ちゃんを載せ、膝の位置をちょうど良い高さに調整しようと股関節にずっと力を入れていたり、お子さんが大きくてその負荷が股関節にかかり続けるような時に発生します。
お子さんの向き癖などで、おっぱいを吸いやすい側というのがあると、片側ばかりでおっぱいをあげがちになる、つまりそこに長期間にわたって負荷がかかり続けるので、片方の股関節ばかりに疲労が蓄積し、過剰に緊張してもとに戻らなくなってしまうわけです。
股関節を開く動きに関連するのは
・内転筋・・・太ももの内側から恥骨につながる
・恥骨筋・・・内転筋と同じだが、恥骨のもう少し外側につながる
・腸腰筋・・・胸椎12番、腰椎から骨盤を抜けて大腿の付け根につながる
写真で言うと、青いラインは内転筋。内側の丸いところあたりに圧痛点が。緑の丸は恥骨筋。これらの筋肉にも硬さと圧痛が出ていることが多いです。
そしてあとは、あぐらの体勢なら大腿筋膜張筋、大腿直筋、縫工筋の起始部も関連することがあります。
痛みのある個所は上の写真のピンクの星のあたり。押すと反対側とくらべて硬くて張りがあり、場合によっては痛みがあります。
これらの筋肉が過緊張していると開脚した時に痛みます。過剰に緊張する、つまりギュッと縮んだ状態で伸びなくなってしまい、それゆえ股関節が開かない、開こうとすると痛みが発生します。
これら症状に関しては股関節の痛みの症例ページをご覧ください。
痛みが出始めてから数か月経ってしまっていたりすると、その間ずっと我慢していた分、緊張が強く慢性化してしまう傾向があります。しつこいものには数回の施術が必要になります。
基本的に施術では骨盤を動きや位置を調整し、過剰に緊張した筋肉部分を念入りにゆるめていきます。
ほとんどの場合緊張した筋肉を緩める操作を続けると、回を追うごとに脚が開くようになります。
痛みがある場合は痛くない範囲で徐々に開くようにして、痛みがない場合は、施術後に開くようになった状態を維持するように、痛くない範囲で時々開くストレッチを行っておくと良いです。
当院のストレッチ動画です。内転筋にアプローチしています。ご参考になれば幸いです。
写真の青のラインの丸が股関節、大腿骨の大転子という場所です。
股関節の外側の痛みでは僕の見ている限り、その大転子の前側の赤い星のあたり、上側の緑の星のあたり、お尻側の紫の星のあたりの3か所に大きく分かれます。
まず産後の股関節外側の痛みで多いのは、大転子の前の赤い星マークのあたり。
大腿筋膜張筋、大腿直筋、縫工筋の起始部になります。
上にある3枚目の前からの写真だとピンクの星のあたりです。添い寝によって痛みが出る場合はここがとても多いです。
その次が大転子のすぐ後ろ紫の星のあたり。お尻の筋肉です。
であとは大転子のすぐ上、緑の星あたりにも痛みが出ることもあります。ここは痛みよりも凝って硬くなってる感じが多いかな。
産後は骨盤が拡がり気味になるのと、お子さんの抱っこなどで、外側に体重がかかるので、股関節でも外側に疲労が蓄積するのでしょう。
さらに小さなお子様のいらっしゃるお母様はお子様と添い寝や添い乳をすることが多いです。
添い寝をする場合、いつもお子様が同じ側に寝て添い寝をすると、いつも同じ側が下になる事になりますが、そのまま寝返りをあまりしない状態でいると、下になっている側が痛くなってきます。
下側の重さのかかっているところは血行が悪くなって痛くなるので、通常は時々寝返りをすることで同じ所にばかり体重がかからないようにしているんですね。
小さなお子様が複数いらっしゃる方ですと、両側にお子様がいて挟まれるので寝返りを打てなくなることがとても多いので、痛みが出やすい傾向があります。
上のような箇所の筋肉が過剰に緊張して硬くなっているので、ここに体重がかかったり動作によって負荷がかかったりすると痛むのです。
ですので施術ではこのような緊張箇所を探して念入りにゆるめるようにします。
いずれの場合でも、片側の症状だと痛い側には脚そのものに張りがあることが多いので、そちら側に体重がかかりがちになっていることが考えられるため、腰や骨盤部の調整が必要になるのです。
よくゆるめて骨盤を調整すると徐々に痛みは治まってきますが、抱っこの多い時期は疲れで再発しやすいですね。放置していると慢性化してしまうので、そのつど解消しておくのがgoodです。
ただ、ここでいくら施術しても、またいつものように同じ側ばかり下にして添い寝をしていると痛みがぶり返してしまうので、なるべく痛い側を下にしないように、そして入れ替えられるならお子様とご自分の位置を入れ替えるようにとお話しています。
いつも同じ側での添い寝というのはお子さんの向き癖のことを考えても良くありません。頭の形が悪くなると顔にも反映します。授乳はなるべく左右バランスよく行うように気をつけてください。
長時間、長期間同じ体勢をとるというのは、できれば避けたほうがいいですね。
(症例)
妊娠中は骨盤周囲に痛みが出ることが多いものです。
骨盤は真ん中の仙骨と左右の腸骨の3つがガッチリと靭帯でつながっているのですが、妊娠して月齢が進んでくるにつれ靭帯がゆるんできて、通常時に比べ体を支えにくくなってきます。
その負担が骨盤周囲の筋肉などにかかるため、筋肉に緊張した個所ができて、ひどくなると痛みになってくるんですね。
腰痛なんかも多いですが、よく目にするのは股関節当たりの痛みです。
先日お越しになった妊娠7か月の方は股関節とお尻と太もものうらに痛みを抱えていらっしゃいました。
2日ほど前から歩いたりすると左股関節とお尻に響き、じっと立っていても違和感があるそうでした。
まず股関節を調べると、左の内転筋の上のほう(上の写真の青のあたり)と、恥骨筋(黄色のあたり)に張りと圧痛がありました。
お尻側は大腿骨の大転子と言われるところの後ろあたりから太ももの後ろ外側に張りと圧痛がありました。
大殿筋、梨状筋(上の写真の緑のあたり)、大腿方形筋(赤のあたり)、大腿二頭筋(青のあたり)です。
はっきりと強い症状がありましたので、ほぼこれらの箇所に集中して、ほぐしてゆるめるようにいたしましたところ、施術が終わって立って歩いてもらっても痛みは出ませんでした。
妊娠中は痛い箇所がその時々で変わることも多いですが、放っておいて慢性痛になると厄介なので、やはりその都度痛みを処理しておいた方が良いでしょう。